70年代から80年代、ゴルフスイングのトレンドは、いわゆる「逆Cスイング」でした。
インパクトからフォロースルーにかけて頭の位置を後方に保ちながら下半身(特に膝)は目標方向にスライドさせながら、フィニッシュでは体がアルファベットの「C」の逆向きのような、ややそっくり返った形になります。
逆Cスイングが美しかった70〜80年代のプロゴルファー
現在では「リバースC」という言い方が一般的ですが、これは現在のゴルフメソッドではよくないフィニッシュの形と言われていますよね。
とは言っても私は「逆Cスイング」に憧れていたくちなのです。
ノータックパンツでの逆Cスイングは70年代後半の最先端でした。
かっこよかったなぁ〜。
って私は小学生でしたから、実際にはJニクラウス対青木功の全米オープン(80年)が感動の始まりだったのですが…。
当時、逆Cのフィニッシュをしていた名選手たち、ジョニー・ミラー、ジャック・ニクラウス、トム・ワトソン、ジェリー・ペイトなどなど。
美しいく理にかなったスイングの代名詞だったと思います。
パーシモンヘッドとスチールシャフトが生んだスイング?
現在ではよくない形と言われている「逆Cスイング」ですが、ではなぜ70〜80年代のトッププレーヤーにはそのようなプレーヤーが多かったのでしょう。
ここからは私の推測ですが、当時のドライバーはスチールシャフトにパーシモンヘッド、42.5〜43.5インチ程度でしたので、体をフルに使って飛ばすスタイルを追い求めた結果、膝の移動が大きいあの逆Cスイングになったのかなあと思います。
ジャック・ニクラウスやトム・ワトソンの当時の膝の動かし方と例えばタイガー・ウッズのそれを見比べると違いが分かります。
思うに現在の長くてヘッドの大きいクラブでは下半身、特に膝を当時のように使う必要がない、ニーアクションを使うと逆に安定感がなくなる原因になります。
そして、逆Cスイング全盛のころは頭の位置が上下に動くのは良くないと言われていました。
それに比べて、タイガーウッズの、あの沈み込みと起き上がりはどうでしょう。あれが、膝を痛める原因だったのでは?
GGスイングと逆Cスイングの違い
最近では、逆Cスイングのころの膝のスライドによるニーアクションではなく、ダウンスイングの始動で左腰を低くして、その後で膝を縦に動かすような動きの『GGスイング』と呼ばれるスイングが巷をにぎわせています。
左ひざを沈ませてからジャンプするような動きを取り入れています。
これも、クラブが完全にパーシモンの時代とは変わってしまったことによるものなのでしょうか?
ドライバーが進化して、飛距離をカバーしてくれる時代になったと感じていましたが、それでもまだ、飛距離を求めるということでしょうか。
私には、不自然な理論に感じて仕方がありません。
テコの応用とカウンターバランスで飛ばす
逆Cスイング全盛期のニクラウスやワトソンのスイングを見てみると、ボールを打ち抜いた直後、両腕が伸びると同時に、目標と反対側へ頭が少し動いて見えます。
これはどういう事でしょう。
胸骨の真ん中あたりを中心に反時計回りにグッと頭も腕も回る感じです。
両腕とクラブを前方に放り投げるように振るため、カウンターバランスとして頭を一瞬右にずらすのでしょうね。
クラブヘッドを走らせるための動きです。
結果、逆Cフィニッシュになります。
アメリカ打法と逆Cスイング
80年代初期、
「アメリカ打法」とか
「アメリカン打法」という言い方がありました。
同名の書籍が日本でも金田武明さんの翻訳で出版されていました。私も買いました。(ボブ・トスキのほうじゃなく、ジム・フリックが著者の本です)
その本の中でのスイング理論では、「引き」という言葉が強調されていました。
「投げ」はしちゃいけない、「引き」を利用して振りなさいと。
そして、フィニッシュでは逆Cになるようにフィニッシュしなさいと教えていました。
逆Cがレッスン書で奨励されていたんです。
そのページに載っていたモデルの写真はトム・カイトでした。
現在の指導者で逆Cを奨励する人はおそらくいないでしょうね。
フォロースルーからフィニッシュでの前傾姿勢の変化
逆Cスタイルの選手を見れば分かるように、インパクトからフォローにかけて、頭を後方に保ち、フィニッシュでもその位置を保とうとしています。
そして、逆Cのプレーヤー、ここ最近の「 I 型フィニッシュ」の選手と違うところは、前傾姿勢までもフィニッシュまで保とうと努力している所です。
頭も斜めなので、視界も斜めになっています。結構辛い体勢です。
しかしスイングの潮流は変わっていきます。
最近のメソッドでは、フォローからフィニッシュにかけて、頭は左足の上に移動していきます。
ターゲットライン後方から見ても、インパクト後は上半身の傾斜を無理に保つ事なく起き上がっていきます。
個人的な印象ですが、なんとなく楽なスイングになってきた気がしませんか?
これもクラブの進化によるものでしょうか。
逆Cは良くないというけど、町の練習場では見かけない
逆Cスイングは、良くないといいますが、本当でしょうか?
良くないというから、結構いるかというと、そうでもありません。
町の練習場で、この人、逆Cだな〜、なんて人を見かけたことはありません。(明治の大砲とは違います)
だって、最後まで前傾を崩さず、首の付け根の位置も動かさないなんて、上級者だからこそ出来ることなわけですから。
最近のトッププロの、膝の動きの少ない、両脚を伸ばして、スクッと立ったフィニッシュのほうが、町の打ちっぱなしで見かけるオジサンたち(私も含む)のフィニッシュに近く見えてしまう私は懐古趣味なのでしょうか。
逆Cでも絶賛され続けるあの方
逆Cスイングでも、未だに絶賛され続けるプレーヤーがいます。
殿堂入りプレーヤーの1人、岡本綾子プロです。 岡本プロも、トム・ワトソンと同じ、俗に言う「ソフト・ニー」スタイルで、膝を送るタイプの逆Cスイングです。
彼女のスイングは未だに絶賛の嵐です。
シャープなスイングですよね。
岡本プロの全盛期に、長尺の大型ヘッドのドライバーが主流だったら、あのシャープなスイングは、また違ったモノになったかもしれませんね。
アイアンは進化したのか?
ここで私にはひとつの疑問があるのです。ウッドクラブはパーシモン時代とは大きく進化しましたが、アイアンに関してはどうでしょうか?
確かにキャビティやら低重心やら研究され進化していますが、プロ仕様のアイアンとなると、70年代とそれほど変化しているとは思えないのですが…。
進化したドライバーが、スイングの主流を変えたような論評が多いですが、そのような論評を読むたびに、「アイアンは、それほど変わってないでしょ?」と突っ込みたくなるわけです。
ドライバーのスイングの変化に合わせて変えなくてもいいアイアンのスイングまで現代風になったということか?
飛ばすのに苦労したんやろなあ、当時のドライバー…。
ワトソン、ニクラウスめっちゃ膝使ってますもん。
私のイメージでは、ワトソンやニクラウスのスイングが王貞治や振り子打法時代のイチローで、現在のメソッドの選手が松井秀樹です。
逆Cスイングカムバック‼︎
追伸:
この記事を書いていてふと思ったことは、スイングが昔と変わってきたのはクラブの進化よりも、ボールの進化によるところが大きいんじゃないかと感じています。
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